2017年3月14日火曜日

4音からなる動機の可能性は何通り?

 とある酒の席での話。
 「作曲をしているあなたに言うのも失礼だけど、もう音楽の可能性は出尽くされてしまった。バッハのような天才など二度と現れまい」と、僕の目の前に座った老人が嘆く。僕の曲を聴いてそれを仰ったのなら批判とも皮肉とも受け取れたので、素直に「ごめんなさい」と言うこともできたのですが、僕はただ「作曲家です」と自己紹介をして彼の前に座っただけ。で、これを言われた。
 バッハの後に生まれたモーツァルトもベートーヴェンもショパンもブラームスもみーんな天才とは呼べないということですね。という嫌味は胸にしまいましたけれども、僕はこれを心ひそかに末法思想と呼んでいます。さぞかし現代音楽は濁世を象徴するものと聞こえてらっしゃることでしょうが、紀元前から続く音楽という営みを、もう少し信頼していただきたいところです。